大麦は非遺伝子組み換え作物であり、家畜に供される飼料用大麦は、昭和38年以降、国が海外(オーストラリア・カナダ等)から輸入し、「政府操作飼料」として売渡してきました。平成19年以降は、輸入方式が「飼料用麦の特別売買契約(SBS)」に変更されましたが、政府が関与する「政府操作飼料」としての位置づけは変わっていません。そして、平成27年には日豪経済連携協定(EPA)が発効、その後平成30年にはTPP11が発効され、主産地であるオーストラリア、カナダからの輸入は民間貿易で行われることになりました。
全麦連が輸入した飼料用大麦は平成29年度で約12万tであり、これは全輸入量の12%に当たります。全麦連はこの買い受けた大麦を傘下工場で単体用・配合用に加工してもらいます。単体用は4つの形態があり、皮付き圧ぺんが大半を占めております。
「皮付き」圧ぺんの製造方法は、原料大麦を蒸気加熱後に圧ぺん機によって加圧加工し、精選・乾燥して仕上げます。「皮むき」圧ぺんはとう精機によって一定量の外皮を取り除き、皮付きと同様の加工方法で仕上げます。
皮付き圧ぺん | 1.5mm程度又はそれ以下の厚さに加圧加工するもの |
皮むき圧ぺん | 1.5mm程度又はそれ以下の厚さに加圧加工するもの(皮は剥いた状態) |
ばん砕 | 孔径2.5mm以下の金網を通過する程度の粒子に加工するもの |
ひき割 | 原麦1粒を4ッ割程度以上に加工するもの |
α化(※)率が高く、脂質に好影響を与えると言われています。
一定量の外皮を取り除き、皮付きと同様の加工方法をします。
加熱蒸気をかけないため、圧ぺんと比較すると消化率は下がりますが、粉砕することで嗜好性は高いです。
粒度が荒く、消化速度は遅いですが、牛の生理に良い影響がある。
肉質向上 | 脂質(霜降り)に好影響を与える。 脂肪は白く硬くなる。オレイン酸が増えて口溶けが良くなる。 |
高カロリー | カロリーが高く、良質なたんぱく質。 |
優れた消化吸収 | 加熱蒸気をかけるとでんぷんがα化され、吸水性が高く酵素の作用を受けて、消化促進、吸収が極めて良くなる。圧ぺんによりカサ(容量)が大きくなり、消化速度も速く、反芻胃に理想的です。 |
インスタント飼料 | 煮たり湯づけしなくてもそのまま与えられます。 |
スタミナがつく | 体重増加、夏バテや寒さ負けを防ぎます。 |
保健機能 | 子牛子豚の下痢予防、また繁殖障害の予防に適しています。 |
品質 | コクがあり優れた品質。 |
嗜好性 | 圧ぺんにより表面積が広がり消化されやすくなり、嗜好性を高めます。 |
単位:%
水分 | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | 可溶性 無窒素物 |
粗繊維 | 粗灰分 | ※TDN | |
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大麦 | 11.5 | 10.6 | 2.1 | 69.0 | 4.4 | 2.3 | 74.4 |
肉牛 | 肥育の前期と中期には肉付きを良くするため、圧ぺん大麦を3~4割与え、たんぱく質に富むものを多く与えます。肥育後期は肉の間に脂肪を交雑させるため、でんぷん質の多い圧ぺん大麦を5~6割与えます。 |
乳牛 | 乳質を向上させ、たんぱく質過剰による繁殖障害を予防し、治療にも極めて効果があります。 |
肉豚 | 育成・肥育の時期に応じて増量して与えると、増体、肉質、脂肪の向上に優れた効果があります。 |
大麦は肉質向上(赤肉は緻密に、霜降りに好影響)に効果的なため、良質な肉質を作るためには不可欠です。
肥育後期では多めに給与されます。
単体飼料を利用し自家配合することにより、コスト低減につながり畜産経営の安定が図られます。